\(i : \mathscr{F}^\prime \to \mathscr{F}\)が層の準同型であるとします.このとき,\(\mathrm{Im} i = i(\mathscr{F}^\prime) \)は\(\mathscr{F}\)の部分層です.また,\(\mathrm{Ker} i \subset \mathscr{F}^\prime\)は,\(i\)で\(\mathscr{F}\)のゼロ切断の像\(\{ 0(x); x \in X \} \)にうつる\(\mathscr{F}^\prime \)の元から成ります.切断の像は開集合なので,\(\mathrm{Ker} i\)は開集合の連続写像による逆像だから開集合であり,したがって\(\mathscr{F}^\prime\)の部分層となっています.
\(X\)は一般に数とは限らないいろいろな"もの"の集合ですが、\(X\)の元と数との間に選好関係を保つような対応があれば応用上有利です。ありがたいことに、\(X\)が高々可算であればそのような対応が存在することが知られています:(証明) まず\(\Rightarrow\)を示す。\(x \succsim y\)を仮定する。推移性により、\(y \succsim z\)となるような任意の\(z \in X\)に対して\(x \succsim z\)が成立する。ゆえに、\(\{ z \mid x \succsim z \} \supseteq \{ z \mid y \succsim z \}\)である。ここで、有限集合\(A\)の要素の個数を\(\sharp A\)とし、関数\(\phi \colon X \to \mathbb{R}\)を$$\phi(x) := \sharp \{z \mid x \succsim z\}$$によって定める。この\(\phi\)について、\(\forall x,y \in X, x \succsim y \Rightarrow \phi(x) \geq \phi(y)\)が成り立つ。
つぎに\(\Leftarrow\)を示す。そのためには対偶を示せばよい。対偶は$$\forall x,y \in X,\ \lnot (x \succsim y) \Rightarrow \lnot (\phi(x) \geq \phi(y))$$であるが、完備性によりこの命題は$$\forall x,y \in X,\ y \succ x \Rightarrow \phi(x) < \phi(y)$$と同値である。ところが、\(y \succ x \)なるとき\(\{ z \mid x \succsim z \} \subsetneqq \{ z \mid y \succsim z \}\)であるため\(\phi(x) < \phi(y)\)である。以上で示された。■
この定理は\(X\)が可算無限集合の場合にも拡張できます:
(証明) まず\(\Rightarrow\)を示す。\(\forall x,y \in X, x \succsim y\)を仮定する。\(X\)の要素にてきとうな番号をふって\(X = \{x_1,x_2,\dots,x_i,\dots\}\)とし、二重数列\(S_{ij}\)を\(x_i \succsim x_j\)のとき\(S_{ij}=1\)、それ以外のとき\(S_{ij} = 0\)と定義する。そして、関数\(\phi \colon X \to \mathbb{R}\)を、$$\phi(x_i) := \sum_{j=1}^\infty \frac{1}{2^j}S_{ij}.$$無限級数が収束するのは明らかである。このように構成された関数\(\phi\)に対して、\(\forall x,y \in X,\ x \succsim y \Rightarrow \phi(x) \geq \phi(y)\)が成り立つ。
\(\Leftarrow\)の場合は定理1の証明と同様。■
集合\(x,y\)に対し、\( \{ \{ x \} , \{ x , y \} \} \)を\(x,y\)の順序対(ordered pair)と呼び、\( ( x , y ) \)と書きます。
\(x , y\)がそれぞれ集合\(a,b\)の元であるとき、\(\{ x \} , \{ x,y \} \subset a \cup b\)だから、\(\{ x \} , \{ x,y \} \)はともにべき集合\(\mathcal{P}(a\cup b)\)の元となります。したがって、$$ (x,y) = \{ \{ x \} , \{ x , y \} \} \in \mathcal{P} ( \mathcal{P} (a \cup b) )$$です。
集合\(a,b\)に対して、それらの直積(direct product)あるいはカルテシアン積(Cartesian product)\(a \times b\)を、$$a \times b = \{ u \in \mathcal{P}(\mathcal{P}(a \cup b )) \mid \exists x \exists y ( x \in a \wedge y \in b \wedge u = ( x , y ) ) \}$$によって定義します。"普通の言葉"で言えば、\(a \times b\)は\(a\)の元\(x\), \(b\)の元\(y\)の順序対\( (x,y) \)全体から成る集合です。合併集合の公理、分出公理、べき集合の公理によって\(a \times b\)の存在は保証され、外延性公理によって\(a \times b\)は\(a\)と\(b\)が与えられたとき確定します。上の定義により、$$u \in a \times b \Leftrightarrow \exists x \exists y ( x \in a \wedge y \in b \wedge u = (x,y) )$$となるので、とくに$$\emptyset \times b = \emptyset, \ a \times \emptyset = \emptyset$$が任意の集合\(a,b\)について成り立ちます。
写像、一般の直積、選択公理
さてこれから写像を定義するわけですが、その前により一般的な概念である"対応"の定義から始めましょう。集合\(a,b\)に対して、直積\(a \times b\)とその部分集合\(f\)の順序対\( (a \times b , f) \)を\(a\)から\(b\)への対応(correspondence)と呼び、\(f\)を対応\( (a \times b, f) \)のグラフ(graph)と呼びます。\(a,b\)が与えられているとき、\( (a \times b , f) \)をたんに対応\(f\)と言うこともあります。\(x \in a\)のとき、\( f(x) = \{ y \in b \mid (x, y) \in f \} \)とおき、\(f(x)\)を\(x\)の\(f\)による像(image)と呼びます。とくに、\(f(x) = \{ y \} ,\ y \in b\)のとき、たんに\(f(x) = y\)と書きます。\(a\)から\(b\)への対応\( (a \times b , f) \)が与えられたとき、これを"対応\(f \colon a \to b\)"と表します。また、集合\(\{ x \in a \mid f(x) \not= \emptyset \}\)を\(f\)の定義域(domain of definition)と呼び、これを\(\mathrm{Dom} f\)と書きます。また、部分集合\(a^\prime \subset a \)に対して、\(f[a^\prime] = \{ y \in b \mid \exists x (x \in a^\prime \wedge (x,y) \in f) \}\)とおけば、$$f[a^\prime] = \bigcup_{x \in a^\prime} f(x)$$となります。\(f[a^\prime]\)のことを\(f\)による\(a^\prime\)の像(image)と呼びます。\(f[a^\prime]\)のことを\(f(a^\prime)\)と書くこともあります。とくに、\(f[a]\)を\(f\)の像または値域と呼び、\(\mathrm{Im}f\)とも表します。
対応\(f\colon a \to b\)は、\(\mathrm{Dom} f = a\)かつ\(a\)の任意の元\(x\)に対して\(f(x)\)が\(b\)の元のシングルトンとなるとき、\(a\)から\(b\)への写像(mapping)と呼びます。たとえば、\(\mathbb{N}\)から\(\mathbb{N}\)への対応\(f\)として\(f = \{ (m,n) \in \mathbb{N} \times \mathbb{N} \mid n = m^+ \}\)をとるとき、この対応\(f \colon \mathbb{N} \to \mathbb{N}\)は\(\mathbb{N}\)から\(\mathbb{N}\)への写像であり、\(f(m) = m^+\)です。
もう一つ重要な例を挙げておきましょう。集合\(a\)に対して\(\Delta_a = \{ (x,y) \in a \times a \mid x = y \}\)を直積\(a \times a\)の対角線集合(diagonal set)と呼びます。\(f = \Delta_a\)とおけば、\( (a \times a , f)\)は\(a\)からそれ自身への写像であり、\(a\)の任意の元\(x\)について\(f(x) = x\)となります。この写像は\(a\)の恒等写像(identity mapping)と呼ばれ、\(\mathrm{id}_a\)または\(1_a\)などと表されます。
写像\(f \colon a \to b\)について\(f[a]=b\)のとき、\(f\)は\(a\)から\(b\)への全射(surjection)と呼ばれ、\(a\)の任意の元\(x,y\)に対して\(f(x)=f(y)\Rightarrow x=y\)が成り立つとき\(f\)は\(a\)から\(b\)への単射(injection)と呼ばれます。\(f\)が\(a\)から\(b\)への全射でありかつ単射でもあるとき、\(f\)は\(a\)から\(b\)への全単射(bijection)と呼ばれます。\(a\)から\(b\)への全単射が存在するとき\(a\)と\(b\)は対等(equivalent)であるといわれ、\(a\approx b\)と書かれます。
また、集合\(a,b\)が与えられたとき、写像\(f \colon a \to b\)は直積\(a \times b\)の部分集合のなかの特殊なものによって定まりますが、\(a\)から\(b\)への写像のグラフ全体からなる集まりは\(\mathcal{P}(a \times b)\)の部分集合です。この後者の集合を\(b^a\)と書くことにします。
\(a\)から\(b\)への対応\(f\)が与えられたとき、\(b\)から\(a\)への対応\(f^{-1}\)を$$f^{-1} = \{ (y,x) \in b \times a \mid (x,y) \in f \}$$によって定義し、\( (b \times a, f^{-1}\)または略して\(f^{-1}\)を\(f\)の逆対応とよびます。2つの対応\(f \colon a \to b\)と\(g \colon b \to c\)が与えられたとき、\(f,g\)の"合成"とよばれる対応\(g \circ f \colon a \to c\)が$$g \circ f = \{ (x,z) \in a \times c \mid f(x) \cap g^{-1}(z) \not= \phi \}$$というように定義されます。\(f \colon a \to b\)と\(g \colon b \to c\)がともに写像ならば、それらの合成\(g\circ f \colon a \to c\)も写像となり、\(x \in a\)に対して\( (g \circ f)(x) = g(f(x)) \)となります。
集合\(a\)からそれ自身への対応\( (a \times a , f) \)あるいは単にそのグラフ\(f\)を、\(a\)の元の間の関係(relation)といいます。集合\(a\)の元の間の関係\(\prec\)について、\( (x,y) \in \prec \)のことを\(x \prec y\)と書くことにしましょう。つぎの条件$$\begin{align} &(1)\ \forall x (x \in a \Rightarrow x \prec x )\ (反射律) \\ &(2)\ x \prec y \wedge y \prec x \Rightarrow x=y\ (反対称律)\\ &(3)\ x \prec y \wedge y \prec z \Rightarrow x \prec z\ (推移律) \end{align}$$が成り立つとき、\(\prec\)を\(a\)の元の間の順序関係(order relation)と呼び、順序対\( (a,\prec) \)のことを順序集合(ordered set)と呼びます。上の(1),(2),(3)は順序の公理(axion of order)と呼ばれます。
\( (a,\prec) \)を順序集合、\(x,y \in a\)に対して、\(x \prec y \wedge x \not= y\)のとき\(x \precneqq y\)と書くことにします。\(x \in a\)に対して、\(a\)の部分集合で\(x\)の切片(segment)と呼ばれるものを$$s(x) = \{ y \in a \mid y \precneqq x \}$$と定めます。
\( (a,\prec) \)を順序集合、\( S \subset a\)とします。\(S\)の元\(s\)について\( \forall t (t \in S \Rightarrow s \prec t ) \)が成り立つとき、そのような\(s\)は一意的に定まり、それを\(S\)の(\(\prec\)に関する)最小元(minimum)と呼び、\(\min S\)と書きます。自然数全体の集合\(\mathbb{N}\)の重要な性質として、「\(\mathbb{N}\)の任意の空ではない部分集合が最小元をもつ」というものがありますが、一般に順序集合\( (a,\prec ) \)において、任意の空でない\(a\)の部分集合\(s\)について\(\min s\)が存在するとき、\( (a,\prec )\)または\(a\)を整列集合(well-ordered set)であるといいます。
順序集合\( (a,\prec_1 ), (b,\prec_2 ) \)および写像\(F\colon a \to b\)が与えられたとします。\(a\)の任意の元\(x,y\)について、$$x \prec_1 y \Rightarrow F(x) \prec_2 F(y)$$が成り立つとき、\(F\)は順序を保つ写像(order preserving mapping)と呼びます。\(F\)が\(a\)から\(b\)への全単射であれば\(F\)は\(a\)から\(b\)の上への順序同型写像(order isomorphism)といい、またこのとき\( (a,\prec_1) \)と\( (b,\prec_2) \)は順序同型(order isomorphic)であるといって\( (a,\prec_1) \simeq (b,\prec_2) \)または\(a \simeq b\)と書きます。たとえば恒等写像\(1_a\)は\(a\)からそれ自身への上への順序同型写像です。
ところで、自然数\(0, 1=\{ 0 \}, 2 = \{ 0,1 \} , 3 = \{ 0,1,2 \} , \dots \)や自然数全体の集合\(\mathbb{N}\)、\(\mathbb{N}^+ = \mathbb{N} \cup \{ \mathbb{N} \}\)などはみな包含関係について整列集合となっています。これらに共通する性質のひとつに、「\(x\)をこれらの中の任意のものの元とするとき、切片\(s(x)\)と\(x\)が相等しいものがある」というものがあります。一般に、\( (a,\prec) \)を整列集合とするとき、\(a\)の任意の元\(x\)について\(x = s(x)\)が成り立つならば、\( (a,\prec) \)(または\(a\))を順序数(ordinal number)と呼びます。自然数や\(\mathbb{N}\)などは順序数ですが、たとえば\(\{ 0,2 \}\)などは包含関係について整列集合とみなすとき順序数ではありません。
\( (a,\prec) \)を順序数としましょう。\(x ,y \in a \)とすると、\(x \precneqq y \Leftrightarrow x \in s(y) \Leftrightarrow x \in y \)、ゆえに\( x \precneqq y \Leftrightarrow x \in y\)が成り立ちます。さらに、\(x \precneqq y \Leftrightarrow s(x) \subsetneqq s(y)\)であるので、$$x \precneqq y \Leftrightarrow x \subsetneqq y \Leftrightarrow x \in y$$が成り立ちます。よって、このとき、順序関係\(\prec\)というのは包含関係\(\subset\)にほかならず、\(a\)の集合論的構造のみによって定まるのです。この事実からも、順序数\( (a,\prec) \)を単に\(a\)と表しても問題ないと納得がいくでしょう。
普通の言葉でいうと、「空でない集合\(a\)に対して、その元\(b\)で、\(b\)のいかなる元も\(a\)には含まれないものが存在する」ということになります。
たとえば、\(x\)を任意の集合とし、\(a = \{ x \}\)とおけば、\(a\)の元は\(x\)のみなので、正則性公理から\(\{ x\} \cup x = \emptyset\)となり、したがって\(x \not\in x \)が成り立ちます。すなわち、正則性公理を仮定すれば、集合がそれ自身を元として含むという状況は起こらなくなります。
最後に、(Set1)-(Set9)から分出公理(Set6')が示されることを見ていきます。集合\(a\)が元\(x\)を含むとき、\(a\)の部分集合\(b\)で、$$t \in b \Leftrightarrow t \in a \wedge t\not= x$$を満たすものが存在することを示します。
\(a = \{x\}\)のときは、\(b = \emptyset\)とすればよいので、\(a \in y, y \not= x\)とします。命題\(P(s,t)\)として、$$(s \in a \wedge s \not= x \Rightarrow t=s) \wedge (s=x \Rightarrow t=y)$$をとると、置換公理によって、集合\(b\)で$$t \in b \Leftrightarrow \exists s (s \in a \wedge P(s,t))$$をみたすものが存在します。これは示したかった性質をみたしています。
このような集合\(b\)を\(a-\{x\}\)と書きましょう。いま\(a\)を集合、\(P(x)\)を\(x\)を自由変数とする命題とするとき、集合\(c\)で$$x \in c \Leftrightarrow x \in a \wedge P(x)$$をみたすものが存在することを示せば、分出公理が成り立つことがわかります。\(x,y\)についての命題\(Q(x,y)\)として、$$(x \in a \wedge P(x) \Rightarrow y = x) \wedge (x \in a \wedge \lnot P(x) \Rightarrow y = a)$$というものをとります。置換公理によって、集合\(b\)で、$$y \in b \Leftrightarrow \exists x (x \in a \wedge Q(x,y))$$をみたすものが存在します。\(b\)の元\(y\)は、\(a\)の元\(x\)で\(P(x)\)を成り立たせるものか、または\(a\)自身です。もし\(a\)の任意の元\(x\)について\(P(x)\)が成り立つならば、\(b = a\)が成り立ち、その場合では上のような\(c\)として\(a\)自身をとれば解決です。もし\(a\)の元\(x\)で\(\lnot P(x)\)となるようなものがあれば、そのような\(x\)に対して命題\(Q(x,a)\)が成り立つから、\(a \in b\)が成り立ちます。ここで\(c = b - \{a\}\)とおけば、\(c\)の元はすべて\(a\)の元\(x\)で\(P(x)\)を成り立たせるものであり、また逆に\(a\)の元\(x\)で\(P(x)\)を満たすようなものがあれば、正則性公理によって\(x\)は\(a\)自身ではないので、\(c\)の元となっています。よって\(c\)は求める集合です。これで分出公理が導かれました。
さて、いよいよ自然数全体の定義に入りましょう。まず集合\(x\)について、「\(x\)は無限系譜である」という命題を\(M(x)\)で表します。論理式で書くと、\(M(x)\)とは、$$\emptyset \in x \wedge \forall y (y \in x \Rightarrow y^+ \in x)$$ということです。空集合とは異なる集合\(a\)に対して、$$\forall x(x \in a \Rightarrow M(x))$$が成り立つとき、\(a\)を無限樹と呼ぶことにします。たとえば、ある無限系譜\(x\)のシングルトン\(\{x\}\)は無限樹です。無限公理によって、無限樹は少なくとも一つ存在します。てきとうな無限樹をとって、共通部分をとることによって樹の"枝"を刈り取り、\(\mathbb{N}\)という一本の幹を切り出そうという魂胆です。
明らかに次の補題が成り立ちます:
\(x \in y\)かつ\(y \in x\)であると仮定する。上の議論により、\(x^+ = y^+ \Rightarrow x = y \vee (x \in y \wedge y \in x)\)であるが、補題2により\(x \in y \wedge y \in x \Rightarrow x \subsetneqq y \wedge y \subsetneqq x \Leftrightarrow x \subset y \wedge y \subset x \wedge x \not= y\)となり、一番右の命題は\( (x = y) \wedge \lnot (x = y)\)を意味するので矛盾。したがって\(x^+ = y^+ \Rightarrow x = y\)が成り立つ。■
最後に、仕上げとして補題2を証明しましょう。
(補題2の証明) \(y = 0 = \emptyset\)ならば、どのような\(x\)に対しても\(x \in y \)も\(x \subsetneqq y\)も成立しない。したがって、\(P,Q\)を任意の命題とするとき、\(x \in 0 \Rightarrow P\)と\(x \subsetneqq 0 \Rightarrow Q\)がともに成立する。ゆえに、このとき補題は成り立つ。
さて、上の議論のなかで、\(\mathbb{N}\)に関して(P3)が成り立つことは補題を用いずに証明されているので、\(\mathbb{N}\)の元\(y\)に関する次の命題\(P_1, P_2\)が示されればよい:$$\begin{align} &P_1: \forall x(x \in \mathbb{N} \wedge x \in y \Rightarrow x\subsetneqq y)\ \Rightarrow \ \forall x(x \in \mathbb{N} \wedge x \in y^+ \Rightarrow x\subsetneqq y^+) \\ &P_2: \forall x(x \in \mathbb{N} \wedge x \subsetneqq y \Rightarrow x\in y)\ \Rightarrow \ \forall x(x \in \mathbb{N} \wedge x \subsetneqq y^+ \Rightarrow x\in y^+) \end{align}$$まず\(P_1\)を示そう。\(x\in \mathbb{N}\)にたいして、\(x \in y^+ = y \cup \{y\}\)となれば、\(x \in y \vee x = y\)である。もし\(x \in y\) ならば、仮定により\(x \subsetneqq y\)であり、ゆえに\(x \subsetneqq y^+\)となる。また\(x=y\)ならば明らかに\(x \subset y^+\)であるから、\(y \not= y^+\)が示されれば\(x \subsetneqq y^+\)が示される。もし\(y = y^+\)ならば、\(y^+\)の定義から\(y \in y\)となるが、仮定と\(x=y\)より\(y \subsetneqq y\)、とくに\(y \not= y\)となるので矛盾である。したがって、\(y \subsetneqq y^+\)となって、\(P_1\)は示された。
次に、\(P_2\)が成り立つことを示そう。\(x \in \mathbb{N}\)について\(x \subsetneqq y^+\)となると仮定する。もし\(y \in x\)ならば\(P_1\)により\(y \subsetneqq x\)となり、ゆえに\(y \cup \{y\} \subset x\)となるが、これは\(x \subsetneqq y^+\)に反する。よって\(y \not\in x \)であるが、このとき\(x \subsetneqq y^+ = y \cup \{y\}\)から\(x \subset y\)がいえる。\(x \subset y \Leftrightarrow x \subsetneqq y \vee x = y\)である。仮定から\(x \subsetneqq y \Rightarrow x \in y \Rightarrow x \in y^+\)であり、しかも\(x=y \Rightarrow x \in y^+\)であるから、\(P_2\)は成り立つ。■